Beyerdynamic T1 1st

Beyerdynamic T1 1stのレビューです。

T1シリーズの現行機は3rdであり1st(正式名称はT1のみですが、便宜上1stと呼んでいます)はT1シリーズ初代となります。

ショップに行った時ハウジングからドライバーが外れた物がジャンク扱い15k程度だったので拾ってみました。

幸い音に問題は無かったので接着剤でドライバーを固定して使っています。

※画像クリックで拡大できます。

装着感=良

装着感はなかなか良いです。

購入時についていたイヤーパッドはカピカピで腐っているような臭いがあったのでポイッと捨ていつものDEKONIのTH900用FNSKメッシュレザーパッドに交換。

ヘッドバンドに巻かれているレザーがへたっていましたがクッション性はある程度あり、側圧も適度なので3、4時間であれば快適につけていられます。

ただし本体重量は約350g軽くは無く、使用時間が長くなるとだんだん首に負担を感じてくるのがネックです。

音について

システムはPC(JRiverMC28)→Waterfall Integrated 250→DCHP-100→T1 1st

はじめにネガティヴな部分から書くとBeyerdynamicのヘッドホンは音場表現が好みではありません。

同社DT990 proを以前持っていましたが立体感や広がりに欠ける音に聴いていて息苦しさを感じて手放してしまいました。

T1でもそれは同様で音場表現は良くも悪くも普通。

以前レビューした機種で言えばEdition10ならボーカルを中心に自身の少し前から音が飛んでくるような感覚があり、SR-407なら音が層になって聴こえるような奥行きがある。

ADX5000であれば耳元だけで音が鳴っているとは思えないような広々とした鳴り方で一聴して「おおっ!すごいヘッドホンだ!」となるそれぞれの凄みがあるんですがT1はそれが乏しく「頭の周りで音がなってるなー」と極普通、当たり前の感想がまず第一に出てきました。

よくよく聴き込むと解像度も非常に高く、各帯域の質は価格なりに素晴らしいものの、音場だけはそこそこのヘッドホンと大差無く若干モニター的に聴こえるのが個人的にマイナスですね。

これが5万程度のヘッドホンであればすごい!と絶賛できるんですがT1は販売当初10万超えはしていたのでもう少し頑張って欲しい所。

アコースティック系の録音が良いソースであれば奥行きや立体的も感じるんですが、メインで聴いているテクノ系では音が頭の周りに集まるような感覚で息苦しい……。

基本性能はとても高く安価に入手出来たので所有欲は高いですが、アニソンや打ち込み系がメインソースの人にはちょっと向かないかな。

 

帯域バランスは低域が弱めなもののほぼフラット。

前回レビューしたSR-407と少し似た帯域バランスでアレをもう少しドッシリと落ち着きのあるバランスにするとT1に近づく。

最もそれは帯域バランスのみの話であり鳴り方や音の質には結構違いがあります。

音色はしっとりと上品、情報量の多い自然な鳴り方、単体で聴いている分には特に不満無い上質な音のヘッドホンです。 

 

高域は硬く金属的な質、と言ってもSR325isやEdition10ほど派手では無くATH-A2000xほど響きも強くない。

前述した機種と比べてT1は煌びやかな音ながら響きはスッキリとしていて純粋に基礎性能が高さから階調の細かいキレイな音を鳴らしている印象です。

シンバル等の金物と相性が良く刺激的な響きを忠実に再現してくれ、音の消え際が美しく生々しさがある。

しかしEdition10の鼓膜を刺すような刺激感は余り無く耳への負担は少なめ。

またバイオリンやピアノも相性が良く、良い意味で音の角をそのまま素直に表現していて適度な緊張感があり気持ち良い。

 

中域は温かみのある柔らかな音。

情報量が多く濃いまとまりのある鳴り方で音楽へ強く没入できます。

分離感はそれほど強くなく繋がりの良いしっとりとした自然な鳴り方。

透明感と艶のあるバランスの良い音で女性ボーカルと相性が良いです。

先程上げたSR325isやA2000xも女性ボーカルと相性が良い機種ですが、こちらは声が近くボーカルの口が大きいためボーカル物と好相性、T1にはそういった独特な鳴らし方は無く声の近さもいたって普通です。

しかし声の持つ情報量を余すこと無く耳に届けてくれ、例えばボーカルの唾を飲む音や口を開く音など口元の動きが見えるような音のディテールを緻密に鳴らしつつ、それを意識せずとも自然に聴き取れる解像度の高い音を鳴らしてくれ、上記二機種とはまた違った良さがあります。

ツインボーカルの曲でもまとまりを持って音楽として聴かせつつ、それぞれの声をハッキリと聴き取れるなど単に分離感の強いだけのヘッドホンとは一線を画す表現力です。

ASMRなんかも生々しく実在感の強い音が相性◯。

 

低域は柔らかく上品な音。

音の輪郭を強調しない全体を下支えするようなどっしりとした鳴り方。

量こそ控えめですが中々厚みがあり、余り締まっている感じが無い割にボワつく事も無くローエンドまで素直に伸びています。

力感や迫力はそれなりでやや落ち着いた音色。

ここは好みがかなりハッキリと分かれる部分ですね。

解像感など質自体は申し分ないんですが正直僕がメインで聴いてるテクノ系には音が大人しくてやや物足りなさがあります。

例えば上述したA2000xも低音が控えめな機種ですが音の勢いやキレが良く立体的に鳴らしてくれるのでテクノも案外楽しく聴ける。

しかしT1だと音が品良くキレイにまとまってしまい、ダメでは無いんだけど求めているのはコレじゃないって感じがあります……。

いつもと気分を変えたい時に聴くなら最適な一本ですが、常用のヘッドホンなら僕は他のヘッドホンにしたいです。

霜月はるかなどの民族調の曲、またはケルト系の曲などのアコースティック系の曲には水準以上の良さを感じますが、テクノ系やアニソン系などの音場感や力感、勢いがほしいソースではT1の良さを活かせず大人しい鳴り方になってしまい相性の悪さを感じる。

 

 

総評、柔らかな音色に金属質な高音のアクセントが光る上品な音色のヘッドホン。

昔店頭視聴した際はもっと明るくキレの良い音の印象で気に入っていましたが、いざ手元の機材で鳴らしてみると当時と印象が変わって驚きました。

まあ僕の耳がULTRASONEやGRADOなど力感や勢いの良いヘッドホンばかりに慣らされているところも多分にあると思います。

またレビュー時は癖が無くヘッドホンのカラーがわかりやすいDCHP-100を使いましたがアンプをAT-HA5000の方にしてあげると音の迫力がかなり改善されて好みの音に近づくので上流の相性も重要ですね。

ただし音場だけはもう少し広がりや立体感が強い方が好きだなぁ。